熱中症予防~食べ物で予防対策~
毎年のように猛暑に見舞われる日本の夏。命に関わる危険もある熱中症を防ぐには、水分補給はもちろんのこと、「食べ物」からの対策も見過ごせません。特に体温調節機能が低下しやすい高齢者にとっては、日々の食事が体調管理の基盤となり、結果的に予防につながります。
実際、2024年に総務省が発表したデータによると、熱中症による救急搬送者のうち約57.4%が高齢者で、全体の6割近くを占めています。この状況からも、食生活や日常習慣を通じた予防の大切さがうかがえます。
また、暑さが本格化する前から、食事や軽い運動を通じて“暑さに負けない体”をつくる長期的な熱中症対策が効果的です。高齢者施設や介護の現場においても、無理なく日常に取り入れられる工夫が求められています。
本記事では、管理栄養士の知見をもとに、熱中症予防に役立つ栄養素や食事の工夫をご紹介します。
暑くなる前から熱中症になりにくい体づくりを
暑熱順化(しょねつじゅんか)という言葉がありますが、これは暑さに少しずつ体を慣らしていくことで、暑い日でも体温を上手に調整できる体をつくり、熱中症の予防につなげる取り組みです。
施設で生活される高齢者の皆さまにとっても、暑熱順化はとても大切です。
例えば、普段からあまり汗をかかない方や運動の機会が少ない方でも、軽く汗ばむ程度の体操や歩行訓練などを行うことで、発汗しやすくなり体の表面から熱を逃がすことで体温の上昇を抑えやすくなります。
また、冷房の効いた室内に長時間いると、体温調節の必要がなくなり、汗や血流を調整する自律神経の働きが低下してしまいます。そのため、冷房機器は適切に使用しつつ無理のない範囲で屋内外の環境にメリハリをつけたり、体をほぐす軽い運動などを取り入れて、自然に暑熱順化を促していきましょう。
体内に水分を蓄えよう
暑い季節は、熱中症を防ぐためにも、日頃から体内に十分な水分を蓄えておくことが大切です。特に高齢者の方は、のどの渇きを感じにくく、脱水症状にも気づきにくい傾向があるため、「のどが渇く前」にこまめな水分補給を心がけましょう。
理想は「1日1.5リットルを8回」に分けて
一度にたくさんの水を飲むのは体に負担がかかるため、1日1.5リットルを目安に、8回ほどに分けてこまめに水分を摂ることがポイントです。
起床時、朝・昼・夕の食事時間、 食間、 入浴の前後、 就寝前など、タイミングを決めて、自分のペースで無理なく飲む習慣をつけましょう。冷たすぎる水が苦手な方には、常温のお水やミネラル豊富な麦茶などが飲みやすくおすすめです。
水分を貯えるカギは「筋肉」!
実は体の中の水分の多くは筋肉に蓄えられており、筋肉量が多いほど水分を保持しやすく、暑さに負けない体づくりにつながると言われています。
施設に入居されている方では「イスに座ったままできる体操」「 手すりを使ったスクワット」「廊下でのゆっくりした歩行」などの運動を無理のない範囲で行い、あわせて筋肉をつくるために必要な栄養素を食事でとっていくことが良いでしょう。
暑さに負けない体をつくる3つの栄養素
以下の3つの栄養素を日々の食事で少しずつ取り入れることができれば、無理なく暑さに負けない体づくりに取り組むことができます。
① タンパク質(筋肉を育てて水分を守る)
タンパク質は筋肉の材料であり、体内の水分保持力を高めるために欠かせません。特にタンパク質の中に含まれる「ロイシン」という成分は、筋肉の合成を促す役割が大きいため、ロイシンを含む肉や魚を積極的にとりましょう。
②タウリン(夏の疲れにやさしく働く)
タウリンは、暑いときに体の奥にこもる熱を下げたり、筋肉の疲れをやわらげたりする疲労回復効果があります。さらに、夏バテによる食欲不振も軽減してくれます。タウリンはイカやタコ、貝類、甲殻類及び魚類などに多く含まれていますが、水に溶けやすい成分なので、汁ごと食べられる料理から効率よくとることができます。
③ ビタミンC(暑さに強い体をつくる)
ビタミンCは抗酸化作用があり、体内の炎症や疲労を軽減し、暑さに適応しやすい体づくりを助けます。タウリンと同じように水に溶けやすい性質があるため、スープや味噌汁でとると摂取しやすく、水分補給にもつながります。
「汗で失われる栄養素」を補給
暑くなってきてからの対策としては、汗をかくことで失われる水分や栄養素をしっかり補うことが大切です。そのためには、汗によって失われやすい「水分」や「電解質(マグネシウム・カリウム・ナトリウム)」、さらに「ビタミン類」などを補える食材を使った食事が必要となります。
カリウム
カリウムは、血圧を安定させ、筋肉の動きをスムーズにします。
バナナなどのフルーツ、ほうれん草、納豆、アボカドの他、季節の野菜や果物に含まれます。
マグネシウム
食べたものをエネルギーに変えたり、神経や筋肉の調子を整えます。
豆腐、海藻、ナッツ、玄米などに含まれます。
カルシウム
骨や歯を丈夫にし、筋肉の収縮や神経の伝達に役立ちます 。
牛乳、チーズ、小魚、小松菜などに含まれます。
塩分(ナトリウム)
体の水分バランスを整えたり、筋肉や神経のはたらきを助けます。
味噌汁、漬物、塩昆布、梅干しなどの食材が熱中症予防におすすめです。
ビタミンB₁
食事からとった糖分をエネルギーに変える手助けをし、疲れにくくします。
豚肉、玄米、うなぎ、納豆などに含まれます。
暑い夏!食事からの水分補給も
夏は気温や湿度が高くなり、体がたくさんのエネルギーを使います。水を飲むだけでなく、食事からも水分をとることで熱中症を予防することが大切です。食事からの水分不足を防ぐために以下のことに気を付けていきましょう。
朝食は抜かない
朝食には、「水分補給」「自律神経を整える」「 日中元気に動くための体力をつける」などの役割があります。そのため、もし朝ごはんが食べられなかったり、残食があったときは、いつもより多めに水分をとりましょう。このとき、塩分もあわせてとることがポイントです。
汁もので水分と栄養をとる
熱中症に効果的な栄養素には水に溶けやすい性質のものもあるため、お味噌汁やスープなどから水分と一緒に栄養を取りましょう。
冷たいもののとりすぎに注意する
暑い日には、冷たい飲み物や食べ物が欲しくなりますが、冷たいものをとりすぎると、消化機能が低下して食欲が落ちてしまい、必要な栄養やエネルギーが十分に取れなくなることがあります。どうしても食事がとりにくいときは、栄養補助食品や栄養ドリンクなどの活用を検討しましょう。
暑さに負けない体づくりを支える介護食
熱中症による体調不良は年々増加傾向にあり、高齢者をはじめ多くの方にとって身近な健康リスクとなっています。しかし、暑くなる前からの適切な準備や栄養バランスのとれた食事で暑さに負けない体づくりをすることは可能です。
グローバルキッチン株式会社が運営する「まごの手キッチン」では、管理栄養士の監修のもと、暑さに負けない体づくりを支える、おいしくて栄養バランスの取れた介護食や調理済みの冷凍食材を、全国の施設へお届けしています。
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