介護施設の開業の手順や必要な資格、費用について解説

高齢化が進む日本社会において、介護施設は需要が増加している施設のひとつです。小規模の介護施設の経営は難しい点も多いものの、これから独立開業を検討する人も少なくありません。
とはいえ、介護施設の開業には必要な手続きや資格が細かく決められており、綿密な準備・計画が求められます。
そこで本記事では、介護施設を開業するまでの手順や求められる資格などについて解説します。介護施設の開業に必要な費用目安も紹介するので、これから介護施設の開業を目指す場合はぜひ参考にしてみてください。
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介護施設の開業の手順
介護業界は今後も高齢化の進展に伴って需要が増加すると見込まれており、独立開業を検討する人も少なくありません。しかし、介護施設の開業には複数の手続きや資格、資金調達、行政の指定申請など、一般的な起業とは異なる専門的な流れがあります。
ここでは、介護施設の開業に必要な手順を、以下の7つに分けて段階的に解説します。
- サービス形態の決定
- 法人設立
- 資金調達
- 設備の確保
- 人材の確保
- 指定申請
- 開業準備・運営開始
各ステップで実施すべき内容に加え、開業を成功させるためのポイントにも触れるので、ぜひ介護施設の開業を進める際の参考にしてみてください。
サービス形態の決定
介護施設を開業する際、まず最初に決めるべきは「どの介護サービスを提供するか」というサービス形態です。
介護事業は大きく分けて、「在宅介護サービス」と「施設系サービス」の2種類があります。
在宅介護には訪問介護(ホームヘルプサービス)や訪問看護、デイサービスなどが含まれ、施設系には有料老人ホームやグループホーム、特別養護老人ホームなどが該当します。
それぞれのサービス形態によって、必要となる人員・設備・資格・指定申請先が異なります。
たとえば、デイサービスの場合は機能訓練指導員や生活相談員の配置が必要であり、有料老人ホームでは24時間体制の介護・看護体制が求められます。
一方、訪問介護では利用者の自宅を訪問して支援するため、拠点となる事業所とスタッフの移動手段を確保する必要があります。
開業目的や地域ニーズ、資金規模に応じて、どの形態で始めるのが現実的かを見極めましょう。最初から大規模施設を運営するよりも、まずは通所介護など比較的少人数から始め、経験と実績を積んで拡大していく方法も現実的です。
法人設立
介護事業を行うには、原則として法人格を持つ必要があります。個人事業主としての運営はできないため、株式会社・合同会社・社会福祉法人・医療法人など、いずれかの法人を設立しなければなりません。最も一般的なのは、開業の自由度が高く設立コストの低い「株式会社」または「合同会社」です。
法人設立には、定款の作成・公証人役場での認証・法務局への登記申請などが必要です。登記完了後は、税務署や社会保険事務所などへの届け出も行います。この法人格が、行政への指定申請や介護報酬の受給の前提条件です。
また、介護事業の場合、設立時点から「営利目的であっても公共性を持つ事業」として扱われるため、経営理念や運営方針を明確化しておくことが求められます。事業計画書には、施設の目的・サービス内容・職員体制・利用料金・資金計画などを具体的に記載しましょう。
資金調達
介護施設の開業には多額の初期費用がかかります。とくに建物の賃貸や改修、設備購入、人材採用、運転資金を含めると、数百万円〜数千万円規模になるケースも珍しくありません。
資金調達の主な方法としては、以下のような選択肢があります。
- 日本政策金融公庫の創業融資
- 自治体の補助金・助成金制度(例:介護施設整備補助金など)
- 民間金融機関からの融資
- 自己資金・親族からの借入
日本政策金融公庫では、創業計画書を提出すれば、無担保・無保証人の「新創業融資制度」を利用できる場合があります。また、介護業界は社会的意義が高いため、自治体や福祉関連機関による支援策も比較的充実しています。
開業資金を確保するだけでなく、少なくとも6か月分以上の運転資金を見込むことが重要です。介護報酬は月単位での後払いとなるため、初期はキャッシュフローが不足しやすい点にも注意しましょう。
設備の確保
サービス形態を決定し、資金調達の目処が立ったら、事業所や施設の確保に進みます。施設を新築・改装する場合は、建築基準法や消防法、バリアフリー法などの基準を満たす必要があります。
とくに介護施設は「高齢者が安全に過ごせる環境」であることが前提のため、段差のない構造や手すり設置、避難経路の確保などが必須です。
また、デイサービスやショートステイでは、浴室やトイレの数・広さ、休憩スペースの配置なども指定基準に含まれています。設備基準は各自治体の条例によっても異なるため、必ず所在地の担当課(介護保険課や高齢福祉課など)への確認が必要です。
さらに、設備面では利用者の快適性も重要です。明るく清潔な内装や快適な温度管理、食堂・談話スペースなどの整備は、利用者満足度を大きく左右します。
人材の確保
介護施設を開業するうえで最も重要かつ課題となるのが人材確保です。介護職員・看護職員・生活相談員・機能訓練指導員など、サービス種別に応じて定められた職種を配置しなければなりません。人員基準を満たさないと指定申請が通らないため、採用計画は早い段階で立てる必要があります。
求人はハローワーク・介護専門求人サイト・人材紹介会社などを活用します。ただし、経験者の確保が難しい場合も多いため、未経験者の教育体制を整えることも視野に入れましょう。採用後は、資格取得支援制度や研修を充実させることで、離職率を下げる効果が期待できます。
また、介護職はチームワークが重要な業務です。開業当初から職員間のコミュニケーションを促し、理念や方針を共有することで、安定した運営基盤を築けます。
指定申請
介護事業を正式に開始するには、都道府県または市町村に対して「指定申請」を行う必要があります。これは、介護保険法に基づいて介護報酬を受け取るための認可手続きです。
申請には、法人登記簿謄本、定款、事業計画書、設備図面、雇用契約書、資格証明書など、多くの書類が必要になります。申請から指定までには1〜2か月程度かかるのが一般的で、自治体によって受付時期が限られている場合もあるため、スケジュール管理が重要です。
審査を通過すると「介護保険事業者指定通知書」が交付され、晴れて介護保険制度のもとでサービス提供が可能になります。
開業準備・運営開始
指定を受けたら、いよいよ開業準備に入ります。内覧会や地域住民向け説明会を開催して認知度を高めるほか、ケアマネジャーへの営業活動も欠かせません。利用者獲得の初期段階では、地域包括支援センターや病院のソーシャルワーカーとの連携も効果的です。
また、介護報酬の請求や利用者情報の管理には、介護ソフトの導入が必須です。請求業務を自動化すれば、事務作業の負担を軽減し、スタッフがケアに集中できる環境を整えられます。
開業直後は利用者が安定しないことが多いため、最低でも半年〜1年は赤字を想定した資金計画を立てておきましょう。
介護施設の開業に必要な資格・職種
介護施設を運営するには、事業者自身やスタッフが特定の資格を保有している必要があります。ここでは、求められる主な資格・職種として、以下の6つについて紹介します。
- ケアマネジャー
- 介護スタッフ
- 訪問介護スタッフ
- 生活相談員
- 看護職員
- 機能訓練指導員
各資格とその役割についてチェックし、介護施設開業時の人材確保に役立ててください。
ケアマネジャー
ケアマネジャーは、利用者のケアプランを作成し、介護サービス全体をコーディネートする専門職です。介護保険制度の中心的な存在であり、各施設・事業所に必ず配置が求められます。
資格を取得するには、介護福祉士や看護師などの資格を持ち、一定の実務経験を経てから試験に合格する必要があります。
介護スタッフ
利用者の入浴・排泄・食事など、日常生活を支援するのが介護スタッフです。無資格でも働けますが、介護職員初任者研修や実務者研修の修了者が優遇されます。
資格を持つことで業務範囲が広がり、加算取得にもつながるため、開業時は有資格者を中心に採用するとよいでしょう。
訪問介護スタッフ
訪問介護事業所を開業する場合、サービス提供責任者(サ責)を配置しなければなりません。サ責になるには、介護福祉士または実務者研修修了者の資格が必要です。利用者の自宅を訪問してケアを行うため、信頼関係の構築やマナーも重視されます。
生活相談員
生活相談員は、利用者や家族との相談業務・契約・他機関との調整などを担当します。資格としては、社会福祉士・精神保健福祉士・社会福祉主事任用資格などが必要です。施設の窓口的存在であり、コミュニケーション能力が特に重視されます。
看護職員
デイサービスや特定施設入居者生活介護などでは、看護職員の配置が義務づけられています。看護師または准看護師の資格が必要で、利用者の健康管理や服薬管理、医療機関との連携を行います。医療的ケアが必要な利用者を受け入れる場合、看護職員の役割は非常に重要です。
機能訓練指導員
リハビリや身体機能の維持・回復を支援する専門職です。資格としては、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、柔道整復師、看護師などが該当します。デイサービスや通所リハビリでは、機能訓練指導員の配置が加算要件となっており、施設の差別化にもつながります。
介護施設の開業に必要な費用
介護施設の開業費用は、事業形態や規模によって大きく異なります。以下は一般的な費用目安です。
- デイサービス:約1,000万〜2,000万円
- グループホーム:約2,000万〜5,000万円
- 有料老人ホーム:約5,000万〜1億円以上
- 訪問介護事業:約300万〜800万円
内訳としては、建物の賃貸・改装費、人件費、備品購入費、指定申請費、運転資金などが含まれます。とくに建物関連費用が大部分を占めるため、居抜き物件を活用することでコストを抑える方法もあります。
また、開業直後は利用者数が安定しないため、当面の運転資金を確保しておくことが不可欠です。介護報酬の入金まで1〜2か月のタイムラグがある点も踏まえ、十分な資金計画を立てましょう。
介護施設の開業を成功させるポイント
介護施設を軌道に乗せるためには、開業後の運営にも戦略が欠かせません。以下では、成功するための以下の4つのポイントを紹介します。
- 利用者数の確保
- 働きやすい環境の整備
- 業務の効率化
- 運営資金の確保
各ポイントについて詳しく確認して、介護施設の開業・運営時に役立ててください。
利用者数の確保
介護施設の安定経営には、継続的な利用者の確保が欠かせません。地域包括支援センターやケアマネジャーとの関係づくりを強化し、信頼を積み重ねることが重要です。
また、地域行事への参加や無料体験会の開催など、地域に密着した広報活動も効果的です。口コミや紹介が新規利用者獲得の大半を占めるため、既存利用者へのサービス品質向上が最大の集客策ともいえます。
働きやすい環境の整備
スタッフが安心して長く働ける環境を整えることは、サービスの安定提供に直結します。離職率が高いと採用コストが増加し、利用者にも不安を与えます。適正な人員配置や休暇制度、教育・研修制度を整備し、職員のキャリアアップを支援しましょう。
職場の雰囲気づくりも大切で、コミュニケーションの活性化や職員の意見を反映する仕組みが効果的です。
業務の効率化
人手不足が深刻な介護業界では、業務の効率化が経営の鍵を握ります。介護記録ソフトや勤怠管理ツール、請求システムなどを導入し、事務作業を自動化することで時間を節約可能です。
また、厨房業務や清掃、洗濯などの周辺業務を外部委託することで、職員が介護業務に専念できる環境を整えられます。とくに食事提供の負担は大きいため、調理済み食材サービスを利用すれば、食事の質を保ちながら人件費を削減可能です。
運営資金の確保
介護事業は初期投資が大きく、収益が安定するまで時間がかかるビジネスです。安定運営のためには、常に6か月以上の運転資金を確保し、資金繰りを定期的に見直すことが重要です。補助金・助成金の情報もこまめにチェックし、設備投資や人材育成に活用しましょう。
また、経営分析を行い、利用率や収益構造を定期的に可視化することで、早期に課題を発見しやすくなります。
まとめ
介護施設の開業は、制度や基準を理解したうえで進めることが不可欠です。サービス形態の決定から開業準備・運営開始まで、すべてのステップに法的・実務的な要件が存在します。
開業後は、利用者の確保・スタッフの定着・業務の効率化・資金繰りの最適化が持続的な経営のために求められます。地域特性を踏まえたサービス設計と、利用者に寄り添う運営方針を持ち続けることで、長期的に信頼される施設へと成長できるでしょう。
また、経営を安定させるうえで見逃せないのが食事提供に関わる業務の効率化です。調理・盛付・衛生管理などの作業負担はスタッフの時間を圧迫し、運営コストにも大きく影響します。こうした課題を解消する手段としておすすめなのが、グローバルキッチンが提供する「まごの手キッチン」です。
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