介護施設の稼働率とは?低下する原因や向上させる方法を解説

介護施設の経営の安定性を示す重要な指標に、稼働率というものがあります。一般的に稼働率は、実利用者と施設の定員から計算可能です。
介護施設において稼働率は適切な水準を維持するのが理想的ですが、稼働率が低下する要因が複数存在します。
そこで本記事では、介護施設の稼働率とは何か、計算方法などを解説します。介護施設の稼働率が低下する一般的な要因や、稼働率を上げるためのポイントなども解説するので、ぜひ最後までチェックして、施設運営に役立ててください。
介護施設の稼働率とは
介護施設の経営において「稼働率」は、経営の安定性を示す重要な指標です。施設の稼働率が高ければ、利用者数が安定しており、収益も確保しやすくなります。反対に、稼働率が低いと固定費を賄えず、赤字運営に陥る可能性が高いといえるでしょう。
具体的に、介護施設における稼働率とは、「利用可能な定員数に対して、実際にどれだけ利用者が入所・利用しているか」を示す割合のことです。たとえば、定員が30名のデイサービスで、1日の平均利用者が27名であれば、稼働率は90%となります。この数字は、単に利用者数を示すだけでなく、経営の健全性を判断する重要な目安でもあります。
施設の形態によって稼働率の捉え方は異なります。デイサービス(通所介護)の場合は、日ごとの利用者数をもとに計算し、ショートステイ(短期入所)では延べ宿泊数を基準とします。特別養護老人ホームや有料老人ホームなどの入所型施設では、入所定員に対して実際の入居者数を比率化するのが一般的です。
稼働率は単なる数字ではなく、「利用者の満足度」「スタッフの対応力」「地域ニーズとの適合度」など、さまざまな要素が反映される総合的な指標です。
介護施設の稼働率の計算方法
具体的な計算方法を理解しておくことで、施設運営の現状を数値として評価し、課題の発見や改善策の立案につなげることができます。
稼働率の計算式は、次のように表されます。
稼働率(%)=(実際の利用者数 ÷ 定員)× 100
この式を使えば、日次・月次・年次など、さまざまな期間で稼働状況を分析することが可能です。
ただし、施設の種類や運営形態によって計算方法が若干異なる点には注意が必要です。以下に、主要な施設形態ごとの算出例を挙げます。
デイサービス(通所介護):
稼働率=平均利用者数 ÷ 定員 × 100
例:定員20名で平均利用者18名の場合 → 90%
ショートステイ(短期入所生活介護):
稼働率=延べ利用者数 ÷(定員 × 期間日数)× 100
例:定員20名で30日間の利用延べ人数が540人の場合 → 540 ÷(20×30)=90%
有料老人ホーム・特別養護老人ホーム:
稼働率=実際の入居者数 ÷ 定員 × 100
例:定員80名で実入居者72名の場合 → 90%
このように、稼働率の計算自体はシンプルですが、正確な分析には「期間」「施設形態」「利用パターン」を踏まえて計測する必要があります。また、短期間のデータだけでは正確な傾向を把握しにくいため、3か月〜半年単位の推移を確認することが望ましいでしょう。
稼働率の把握は、経営改善や加算取得の検討にも役立ちます。たとえば、一定の稼働率を維持できている施設は、設備投資や人員増強による加算要件を満たしやすく、事業拡大の判断材料にもなります。一方で稼働率が下がっている場合は、早期に原因を特定し、改善に向けた施策を講じることが経営安定のポイントです。
介護施設の稼働率が低下する原因
介護施設の稼働率が低下する背景には、地域環境や競合状況などの外的要因と、運営体制や人材問題などの内的要因があります。稼働率の低下は単一の理由ではなく、複数の要素が重なって発生するケースが多いため、原因を明確に把握することが重要です。
ここでは、代表的な要因を以下の4つに分けて解説します。
- 地域に高齢者が少ない
- 競合他社が存在している
- ターゲットのニーズを把握できていない
- スタッフが不足している
地域に高齢者が少ない
介護施設の利用者は、原則として施設の近隣エリアに居住する高齢者が中心です。そのため、地域の高齢者人口が減少している場合、利用者の確保そのものが難しくなります。とくに地方の中山間地域や若年層の流出が進んでいるエリアでは、介護ニーズの総量が減少しており、施設間で利用者を奪い合うような状況に陥ることもあります。
また、近年は都市部への高齢者移住や、在宅介護サービスの拡大によって「施設に入る必要がない」と判断する世帯も増えています。こうした環境変化により、施設が立地する地域の人口動態を正確に把握していないと、開業後に想定よりも利用者が集まらないという事態が起こりやすいのが現状です。
さらに、地域によっては介護保険事業計画で「特定サービスを重点化」「他サービスの新設抑制」などの方向性が定められている場合もあります。そのため、施設開設前だけでなく、運営中も定期的に行政資料や地域包括支援センターのデータを確認し、地域ニーズの変化を先読みする姿勢が必要です。
競合他社が存在している
介護業界は参入障壁が低く、法人・個人事業者問わず新規参入が相次いでいます。そのため、同一エリア内で同様のサービスを提供する施設が乱立しやすく、利用者の奪い合いが起こりやすいのが現状です。とくにデイサービスや有料老人ホームなど、比較的開業しやすい形態ではこの傾向が顕著だといえます。
利用者や家族は、料金やサービス内容だけでなく、アクセスのしやすさ、送迎範囲、スタッフの対応、施設の清潔感など、さまざまな観点で比較します。その際、自施設の選ばれる理由が明確でなければ、たとえサービス品質が高くても他施設に流れてしまうリスクがあるため注意が必要です。
ターゲットのニーズを把握できていない
介護施設のサービスが地域の高齢者ニーズに合致していないと、利用したいと思われにくくなるため、稼働率が伸び悩みます。たとえば、要介護度の高い利用者が多い地域で、リハビリ中心のデイサービスを展開しても、利用者の獲得は難しいでしょう。反対に、比較的元気な高齢者が多い地域で、介護重視の施設を運営しても需要が合いません。
さらに、家族のニーズを見落としているケースも少なくありません。施設を選ぶのは高齢者本人だけでなく、その家族が決定に関わることが多いため、「送迎の柔軟さ」「緊急時対応」「看取り体制」など、家族が重視する要素を理解しておく必要があります。
こうしたズレを防ぐためには、利用者アンケートやケアマネジャーへのヒアリングを定期的に実施し、地域ごとの需要分析を継続的に行うことが大切です。また、サービス設計の段階でターゲット層を明確に設定し、その層が抱える課題に対応できる体制を整えることが稼働率維持につながります。
スタッフが不足している
介護業界全体で深刻化しているのが、慢性的な人手不足です。とくに小規模な施設では、限られたスタッフで運営しているため、ひとりの退職が稼働率に直接影響することもあります。職員数が不足すると受け入れ人数を制限せざるを得ず、結果的に稼働率が下がる要因となります。
また、スタッフの疲弊によってサービスの質が低下すると、利用者満足度が下がり、口コミや紹介が減るという悪循環も生まれます。職員が余裕をもって働ける環境を整備しない限り、稼働率の回復は難しいといえるでしょう。
介護施設の稼働率を向上させる方法
稼働率を上げるためには、単に利用者を増やすだけではなく、施設全体の運営体制を改善し、サービス価値を高める取り組みが必要です。ここでは、具体的に効果的な以下の4つの方法を紹介します。
- 加算の取得
- 業務の効率化
- 競合分析
- 利用者満足度の向上
加算の取得
介護報酬制度では、一定の条件を満たすことで「加算」が認められ、サービス単価を引き上げることが可能です。たとえば「個別機能訓練加算」「口腔機能向上加算」「処遇改善加算」などが代表的で、これらを組み合わせることで収益構造を安定化させることができます。
加算を取得するには、専門職の配置や定期的な会議・記録体制など、細かな条件をクリアする必要がありますが、その準備過程自体がサービスの質を高めることにもつながります。たとえば、理学療法士を配置すればリハビリ特化型としての訴求が可能となり、利用者満足度の向上も期待できるでしょう。
また、加算を目的化せず、「利用者の生活改善や職員のスキル向上につながる仕組み」として活用する姿勢が重要です。加算による収益向上は、スタッフ待遇の改善・設備投資・サービス拡充といった次の成長サイクルを生み出す原動力になります。
業務の効率化
限られた人員で高品質なサービスを維持するためには、業務の効率化が求められます。近年は、介護記録ソフトや請求システム、勤怠管理ツールなどを導入する施設が増えており、書類作成や請求業務を自動化することで大幅な省力化が実現しています。これにより、職員はより多くの時間を利用者支援やコミュニケーションに充てることが可能です。
また、厨房業務や清掃、送迎といった付帯業務を外部委託するのも効果的です。たとえば、調理済み食材サービスを導入すれば、食事提供にかかる時間と人件費を削減しながら、温かく安全な食事を提供できます。再加熱器やクックチル対応システムを活用すれば、スタッフの少ない施設でも対応可能です。
さらに、業務効率化には「見える化」も欠かせません。作業手順をマニュアル化し、属人化を防ぐことで、誰が担当しても同じ品質を維持できます。これにより、サービスの安定性が増し、長期的に利用者からの信頼を得やすくなるでしょう。
競合分析
稼働率を改善するためには、まず自施設が地域の中でどのようなポジションにあるかを明確にすることが重要です。競合施設の調査を行い、サービス内容・料金・設備・スタッフの対応・評判などを比較すれば、自施設の強みと弱みが浮き彫りになります。
たとえば、他施設がレクリエーション重視であれば、自施設はリハビリや機能訓練に特化するなど、方向性を明確に打ち出すことで差別化を図れます。
また、行政の介護保険事業計画や地域包括支援センターが公開するデータを活用すれば、今後需要が高まるサービス分野を先取りすることも可能です。たとえば、認知症対応や医療連携型のサービス、在宅支援に強い施設など、時代の変化に合わせた戦略を立てることで、安定した利用者獲得につながります。
競合分析は一度きりで終わるものではなく、継続的に実施することが重要です。市場動向や他施設の取り組みを把握し、自施設の運営方針を柔軟に見直すことで、長期的に選ばれ続ける施設づくりが可能になります。
利用者満足度の向上
介護施設の稼働率を上げるうえで、最も持続的な効果を発揮するのが「利用者満足度の向上」です。どれだけ広告を出しても、実際に利用している人やその家族が満足していなければ、リピートや紹介にはつながりません。逆に、利用者からの口コミや紹介が増えれば、自然と稼働率が上がっていきます。
満足度を高めるには、日々の介護サービスの質だけでなく、スタッフの言葉遣いや表情、施設の清潔さ、食事の美味しさといった細部にまで気を配る必要があります。また、利用者アンケートを定期的に実施し、改善要望を迅速に反映する姿勢を示すことが信頼の構築につながります。
まとめ
介護施設の稼働率は、経営の安定性を示す最も重要な指標のひとつです。稼働率が高いほど、利用者に選ばれている証であり、職員の働きやすさや地域からの信頼にもつながります。一方で、地域特性・人材不足・運営体制など、さまざまな要因によって稼働率が低下することもあるため、継続的な改善と柔軟な対応が欠かせません。
稼働率を維持・向上させるためには、加算の取得や業務効率化などの経営的な工夫に加え、
利用者満足度を高める「サービスの質」が何より重要です。そのなかでも、日々の食事提供は利用者の満足度に直結する大切な要素だといえます。しかし、調理業務は人手や時間を大きく必要とするため、小規模施設や人員が限られた事業所では負担になりやすいのが実情です。
そんな課題の解決に役立つのが、グローバルキッチンが提供する介護施設向け食材サービス「まごの手キッチン」です。
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介護施設の稼働率向上を目指すうえで、まずは日常業務の負担を軽減し、スタッフが本来のケア業務に集中できる環境を整えることが重要です。ぜひ一度、「まごの手キッチン」を活用して、施設運営の質と効率の両立を実現してみてください。









