介護施設のコストを削減するアイデアやステップ、注意点を解説
介護施設では、人材不足や運営費の増加などの背景により、コスト削減が求められています。サービスの質や安全性を確保したうえで、余計なコストを削減する工夫が必要です。
とはいえ、介護施設のコスト項目は多岐にわたるため、「どのコストから削減すればいいのかわからない」「コスト削減を目指す具体的な手順を知りたい」といった担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、介護施設のコスト削減の重要性やアイデア、コスト削減を実行する際のステップなどを解説します。コスト削減を目指す際の注意点にも触れるので、ぜひ最後までチェックして、施設でのコスト削減計画に活かしてください。
介護施設のコスト削減の重要性
介護施設は、高齢者や要介護者の生活を支える重要な役割を担っています。しかし、近年では少子高齢化による人材不足や、運営費の増加などによって、多くの施設が経営面での課題を抱えているのが現状です。とくに、介護報酬の改定や光熱費・物価の高騰、賃金の引き上げといった外的要因は、介護施設の経営を圧迫する大きな要素となっています。
こうした状況下で、介護施設が持続可能なサービスを提供し続けるためには、無駄を省く視点でコスト削減に取り組むことが不可欠です。コスト削減は、経費の削減にとどまらず、業務効率の向上や職員の働きやすさの改善、利用者満足度の維持・向上にもつながります。
さらに、適切なコスト管理は経営の安定化にも寄与し、将来的な設備投資や職員の待遇改善といった戦略的な判断も可能になるでしょう。単なる節約ではなく、介護施設が長期的に質の高いサービスを継続するための基盤作りとして、コスト削減に取り組む必要があるといえます。
介護施設の運営にかかるコスト
介護施設を運営するうえで発生するコストは、大きく固定費と変動費に分けられます。コスト削減に取り組むためには、これらのコスト構造の正確な把握が必要です。
固定費とは、入所者数やサービス提供数にかかわらず、一定額が発生する費用を指します。主に以下のようなものが固定費の一例です。
費目 |
概要 |
賃料・建物維持費 |
施設の土地や建物の賃料、修繕費、清掃・保守など |
人件費 |
介護職員、看護師、調理スタッフ、事務職員などの給与や社会保険料 |
通信費・IT関連費 |
電話やインターネット、介護記録システムなどの維持費 |
広告宣伝費 |
入居者募集のための広告出稿、パンフレット制作など |
固定費は毎月または毎年継続的に発生するため、施設の経営に大きな影響を与えます。
一方、変動費とは、入居者数やサービス内容に応じて増減する費用のことです。主に以下のようなコストが該当します。
費目 |
概要 |
食材費・水道光熱費 |
入所者の食事や日常生活に関わる費用 |
備品・消耗品費 |
紙おむつ、衛生用品、洗剤、文房具など日々の介護業務で使われる物品 |
委託費 |
外部業者による清掃・洗濯・警備などのサービス利用料 |
変動費は、介護サービスの提供量や入所者の人数によって変動するのが特徴です。運営状況に合わせた柔軟な見直しが求められます。
介護施設の経営を安定させるためには、これらの固定費と変動費のバランスを正確に把握し、どの項目が施設にとって重荷となっているかを分析することが重要です。また、定期的なコストの見直しにより、無駄な支出を削減し、限られた予算を効果的に活用することが可能になります。
介護施設のコストを削減するアイデア
介護施設の運営にかかるコストのなかには、削減可能な項目がいくつも存在します。ただし、削減を進める際はサービスの質を落とさず、効率化・最適化を目指す視点が重要です。ここでは、代表的な以下のコスト項目ごとに、具体的な削減方法を紹介します。
- 賃料
- 光熱費・水道費
- 人件費
- 備品・消耗品費
- 通信費
- 広告費
詳しくチェックして、ぜひ施設でのコスト削減施策の参考にしてみてください。
賃料
介護施設の賃料は、毎月継続的に発生する固定費であり、運営コストのなかでも大きな割合を占めています。とくに、都市部に立地する施設や築年数の浅い建物に入居している場合、周辺相場に比べて割高な賃料を支払っているケースもあるでしょう。こうした場合には、契約更新のタイミングを活用し、オーナーと賃料の再交渉を試みるのが有効です。
また、施設内の使われていないスペースや利用率の低いエリアがある場合には、その区画を他業者に一部転貸する、あるいは倉庫や備蓄スペースなど別用途での活用を検討することも1つの方法です。
さらに、複数施設を運営している法人の場合は、稼働率や人員配置を再評価したうえで、施設の統廃合を検討することで、長期的な固定費の圧縮が可能になります。
光熱費・水道費
光熱費と水道費は、施設の規模が大きくなるほどコストの総額も上昇しやすい項目です。そのため、日常的な運営にかかる変動費として継続的に見直しが求められます。
まず、照明のLED化は最も効果的な手段の1つです。消費電力を大幅に抑えられるうえ、寿命が長いため交換の手間や費用も削減できます。空調設備においても、エアコンや換気扇のフィルター清掃を定期的に行うことで、電力消費を抑制できるでしょう
さらに、節水設備の導入も有効です。節水型トイレや自動停止機能のある蛇口、低流量シャワーヘッドを取り入れることで、日々の水使用量を大幅に削減可能です。
加えて、「エネルギーの見える化」が実現できるシステムを導入すれば、電気や水の消費状況をリアルタイムで可視化できます。実際に使っている電気や水の消費量を見せることで、職員の節電・節水意識を高めることが可能です。
これらの施策は初期費用がかかることもありますが、数年単位で見れば大きなコスト削減効果をもたらす投資だといえます。
人件費
人件費は、介護施設運営における最大のコスト項目の1つであり、単なる人員削減によるコストカットは避けるべきです。代わりに、業務効率を高める施策や、職員の定着率を向上させる取り組みを通じて、持続可能な形でのコスト削減を目指しましょう。
たとえば、記録業務のデジタル化を進めることで、記入時間や書類整理の手間を大幅に削減できます。紙ベースの管理から、タブレットや専用ソフトを用いた電子記録への移行は、報告・申し送りのミス防止や情報の一元化にも役立つでしょう。
また、業務の外部委託も効果的です。清掃や洗濯、調理といった周辺業務を外部業者に委託すれば、職員が介護業務に集中できる環境を整えることができ、結果的に業務の質向上と効率化が期待できます。離職を防ぐための福利厚生充実やキャリアパスの提示も、長期的な人材定着に寄与し、採用コストの削減にもつながるでしょう。
備品・消耗品費
日々使用される備品や消耗品は、放っておくと無駄な在庫や重複発注が発生しやすい項目です。これらを効率的に管理し、使用状況を最適化することで、無理のないコストカットが可能となります。
具体的には、事務用品や衛生用品、紙おむつ、清掃用具といった消耗品について、購入頻度や使用量のデータを分析し、過剰在庫の削減を目指しましょう。また、調達の際には複数業者からの見積もりを取り、価格・品質・納期を総合的に比較することで、コストパフォーマンスの高い選定が可能です。
同一法人内の複数施設や、地域内の他施設と共同で仕入れを行う共同購買も効果的です。大量仕入れによる単価交渉や送料の分担により、全体としての支出を抑えることができます。発注ミスを防ぐために、発注・在庫管理のシステムを導入すれば、業務効率とコスト削減の両立に役立つでしょう。
通信費
通信費は、一見すると削減余地が小さく見えますが、見直しによって十分な効果を得られる項目です。まずは、現在利用しているインターネット回線や電話サービスの契約内容を再確認しましょう。使用実態に見合わない過剰なプランや不要なオプションが付帯している場合、それらを整理するだけでも大幅なコスト削減につながります。
また、固定電話を中心とした通話体制から、インターネット通話(IP電話)やスマートフォンアプリでの内線化へと切り替えることで、通話料金や機器維持費の削減が可能です。職員間のやりとりもチャットツールや業務連絡アプリを活用すれば、通信費を抑えつつ情報共有のスピードも向上します。
FAXや郵送による書類のやりとりをデジタル化することも、通信費削減に寄与します。電子ファイルでのやりとりが可能になれば、印刷・用紙・インク代の削減も可能です。
広告費
入居者の募集や職員の採用に用いられる広告費は、時期や媒体によって変動が大きく、コスト削減の余地が残されている部分でもあります。費用をかけずに集客・採用効果を高めるためには、自社発信力の強化が必要です。
まずは、施設の公式ホームページやSNSを活用し、日々の様子やスタッフ紹介、利用者の声などを積極的に発信することで、施設の信頼感や親しみやすさをアピールできます。これにより、高額な広告を打たずとも自然な集客が期待できるでしょう。
また、地域包括支援センターや医療機関、行政機関と連携し、紹介ルートを整備することで、広告依存からの脱却を目指せます。採用活動では、求人サイトを使うだけでなく、職場体験会や説明会の開催、リファラル採用制度(紹介採用)なども取り入れると、よりコストを抑えた採用活動が可能です。
介護施設のコストを削減する際のステップ
介護施設のコストを削減する際のステップとして、以下の4つを解説します。
- 現状を把握する
- 削減目標を設定する
- 削減の計画を実行する
- 定期的な見直しをする
現状を把握する
最初のステップは、現状把握です。削減の対象を正確に定めるには、まずどこに・どれだけのコストがかかっているのかを明確にしなければなりません。たとえば、月ごとの光熱費・人件費・食材費・消耗品費などを項目別に分け、過去数か月〜1年分の支出データを集計・可視化しましょう。
また、職員へのヒアリングやアンケート調査を通じて、「無駄だと思う業務」「改善できそうなコスト項目」など、現場視点での気づきを収集することも効果的です。経営層だけでなく、現場をよく知る職員の声を反映することで、より実効性の高い見直し計画を立てることができます。
削減目標を設定する
現状を把握したら、次は削減目標の設定です。ここでは、「どの費用を、いつまでに、どれだけ削減するか」という具体的かつ現実的な目標設定が求められます。
重要なのは、削減目標が達成可能な水準であることです。高すぎる目標は現場に無理を強いる原因となり、業務の質や職員のモチベーションを損なうリスクがあります。逆に、目標が曖昧で緩すぎると、行動の優先順位が下がってしまいます。
この際、「短期的なコスト削減(今期中の削減)」と「中長期的な削減(設備更新やシステム導入による5年後の削減)」とでフェーズを分けて目標設定することも有効です。
削減の計画を実行する
目標が定まったら、いよいよ具体的な削減計画の実行に移ります。削減効果が見込まれる施策から優先的に取り組み、実行状況をこまめにモニタリングしていきましょう。
また、実行段階では現場職員への周知・理解促進が不可欠です。たとえば、「節電のために不要な照明はこまめに消す」「印刷は両面・白黒を基本とする」といった行動を職員が自然に行えるよう、ポスター掲示や朝礼での声かけを実施しましょう。
定期的な見直しをする
コスト削減は一度やれば終わりではなく、定期的な振り返りと改善を続けることが大切です。施策の効果を検証し、うまくいった施策は継続・拡大し、効果が見られなかったものは原因を分析して見直す必要があります。
最終的には、削減活動を一過性の取り組みにせず、「無駄のない運営」が日常的な文化として根付くようにすることが理想です。
介護施設のコスト削減を進める際の注意点
介護施設のコスト削減を進める際の主な注意点として、以下の3つを紹介します。
- サービスの質を低下させない
- 従業員に負担をかけさせない
- 安全確保を最優先に考える
サービスの質を低下させない
最も重要なのは、利用者に提供する介護サービスの質を落とさないことです。コスト削減を目的に必要な人員配置を削ったり、安価な食材や備品に切り替えたりすると、利用者の満足度や信頼を損ねる可能性があります。
たとえば、入浴回数の削減やレクリエーションの縮小、介助時間の短縮などは、短期的には経費削減になりますが、中長期的には施設の評判や稼働率の低下を招きかねません。コスト削減はあくまで「質の維持・向上のための手段」であることを忘れず、利用者ファーストの視点を最優先に据えた見直しが必要です。
従業員に負担をかけさせない
コスト削減を進める際に、職員の負担が過度に増えるような方法は避けるべきです。たとえば、人員削減や業務量の一方的な増加、休日数の削減などが行われると、職員のモチベーションが低下し、離職や定着率の悪化につながります。
業務効率化を図る際には、現場の声をしっかりヒアリングしたうえで負担が集中しない設計を行うことが重要です。職員が納得感を持って取り組んでくれるよう、説明や協力依頼を丁寧に行いましょう。
安全確保を最優先に考える
介護施設においては、利用者の命や健康を守るという責任があります。そのため、安全に関わる設備や消耗品、衛生管理に必要なコストを削減対象にすることは避けるべきでしょう。
たとえば、防火設備の点検を先延ばしにしたり、感染症対策の物資を削減したりすると、大きな事故やクラスターの発生といった重大リスクに直結します。また、老朽化した設備や床材などの修繕を怠ることで、転倒事故などの原因にもなりかねません。
まとめ
本記事では、介護施設のコスト削減の重要性や、具体的なアイデアについて解説しました。介護施設のコスト削減を目指す際は、固定費・変動費を正確に把握したうえで、効率化・最適化を目指しましょう。このとき、サービスの質や安全性の確保を最優先に考える姿勢は崩さないよう注意してください。
介護施設のコスト削減を検討するなら、グローバルキッチンの介護施設向けの食事サービス「まごの手キッチン」がおすすめです。「まごの手キッチン」は、高齢者の方向けの調理済み冷凍食材をお届けする食材提供サービスです。リーズナブルで高齢者にやさしい食事を豊富に揃え、管理栄養士による毎月の献立も提供します。栄養価調整食ややわらか食にも柔軟に対応可能です。
「まごの手キッチン」の導入により、食事の用意にかかる人件費や水道光熱費など大幅なコスト削減を実現し、手間なく安全な食事を提供できるようになります。
「まごの手キッチン」では、高齢者施設で提供する食事や介護食を検討している法人向けに、無料試食サンプルを提供しています。ぜひこの機会に、お気軽にお問い合わせください。